CD「ニューヨーク・スタイル」、アキコ・グレースのニューヨーク3部作の完結編である。彼女のジャズは2002年1月のデビュー以来、日本ジャズディスク大賞ニュースター賞をはじめ、今回の日本ジャズ賞受賞にいたるまで、多くの人に支持されてきた。それは単に彼女がメジャーからデビューしただけでなく、幼少時より鍛えられたテクニックに裏打ちされた演奏に内外から高い評価を得て真に実力派のジャズピアニストならではの評価を得ることができたからに違いない。
2月14日のハスキーズギャラリーのコンサートでも、ベース安カ川大樹、ドラムス嘉本信一郎のレギュラー・トリオで、1部はイット・クッド・ヘプン・トゥ・ユーやキャラバン、グリン・スリーヴスのスタンダードの他に3月4日発売のニューCD「TOKYO」からコルトレーンのジャイアント・ステップ、おぼろ月夜が演奏された。
ジャイアント・ステップ、この曲、彼女のアレンジはすばらしく、コルトレーンのオリジナルにはない、ダイナミックではあるが、いかにもアキコ・グレースらしい繊細なオリジナリティを感じさせる秀曲であった。それはまさに熟練の機織り師が、いろいろな糸を自由自在に織り上げていく様ににている。まさにライブの醍醐味である。
2部はバン・ヘイレンのジャング、心和むチャップリンのスマイル、かごめかごめ、パーカーのドナ・リー、そして、あの9.11ニューヨークテロの鎮魂曲として彼女自身が作曲したオリジナル、グランド０、最後にデンジャラス・ストリート・ブルースと、まったく聴衆をあきさせることなく、茅ヶ崎出身の世界のジャズピラニスト、アキコ・グレースのコンサートは終了した。今年の秋はヨーロッパ・ツアーにでかけるという。さらなる彼女の活躍を期待したい。

2004年　2月　14日　ハスキー 加藤信吾