BACK NUMBER　2005年　9月
川上さとみ・ジャズ・コンサート

その日は初秋なのに、残暑が厳しく、翌日の衆議院選挙投票日を控え、ギャラリー近くの駅頭は、候補者の演説で熱く燃えていた。
メジャーレーベルM&IよりCD「ティアラ」をリリースした川上さとみをぜひハスキーズギャラリーで…というオファーからはじまったこのライブ、彼女、愛読のスイングジャーナルによると、ハンク・ジョーンズやリッチー・バイラークが認めた逸材。そのいのちの通った強靱なピアノの音に圧倒される。そう、大西順子をイメージするピアノ・スタイルを連想させる書き出しのライナーノートのイメージをもっていたが、実際は長い黒髪、スレンダーなスタイル風貌は似ているが、その演奏スタイルは、CDタイトル曲ティアラをはじめ、大部分がオリジナルであることからも、女性らしい、美しい旋律を大切にする川上さとみジャズという確かな自分の演奏スタイルを持ったミュージシャンだとかんじだ。ライブはCD挿入曲インサイド、ティアラ、エモーションにあわせ、イン・ア・センチメンタル・ムード、アローン・トゥゲザーなどスタンダードを併せ、1回45分、2ステージ、汗をびっしょりかきながらビートを刻む、ベース小杉敏、ドラムス田鹿雅裕のリズムセクションとの素晴らしいコラボレーションだった。特に、1stステージの最後、ファースト・フラッシュ、川上のピアノ・ソロからはじまり、そのピアノに、でしゃばらず、心地よくついてゆくリズム・セクション。まさにピアノ・トリオ・ジャズのお手本のようなライブであった。

2005年　9月 10日　ハスキー 加藤信吾

↑川上さとみ